忍者ブログ

Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<小説

「ぼくは今もそうだけれども、普通の小説家のように、人間のことを追っかけていた。人間に興味をもつといってもいい。ふしぎなことをいったりする人だ、とか、こんなとき、どうしてこうなんだろう、とか、それにたいして自分は、またこんなことしか出来ないが、これはいったい何故なんだろうか、とか、こういうことを考えると、どうしても書きたいと思った。たぶん、ほかの方法では、どうしても十分に表現することが出来ない人間だったからでしょう。自分の気持、ひいては他人の気持、そんなことでアタマがいっぱいになると、自分のアタマが小説として走りだしかかるというぐあいだった。
 …………
 森さんは、もちろん、小説家にかぎらず人間とはそういうものだ、ということを十分に心得ておられた。
 ……小説家というものは、弱いものだ。これはぼくだけではない。人間は、といいかえてもいい。何故かというと、小説を書こうとしていたり、書いていたりするときは、いちばん人間に接近し──接近しすぎるくらいだ──人間そのものになるときだからだし、そうでなければ、小説は無用のものだから。」
(森敦+小島信夫『対談・文学と人生』)
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

プロフィール

HN:
trounoir
性別:
非公開

P R