「レイプとは加害者が被害者の主体性を奪う行為である。快楽と苦痛の支配権を加害者が握り、被害者は肉体だけでなく精神の自由も奪われる。「私が○○をする」という意志が剥奪されるのだ。意志のない存在になるということは、私という存在が、私のものでなくなり、「私が私である」という感覚が奪われることである。……
この〈私〉の殺人こそが、私がレイプ・ファンタジーを求める欲望の核心にある。私は、〈受〉に同一化してレイプされるときに、「私が私である」という感覚を手放そうとする。すべてを、〈攻〉にゆだね、私の支配権を引き渡す。私は「気持ちがいい」や「苦しい」という感覚さえも、〈攻〉の思うままにされ、自分のものとは思えなくなっていく。それは支配され、肉体だけでなく精神の自由も奪われることだ。だが、同時に「私の意志」からは解放される。私はもう、何も考えなくていいし、何もしなくていい。ただ、〈攻〉に身を任せていればいい。そして、〈攻〉に飲み込まれ、一体化してしまうのだ。このファンタジーの中で、〈受〉に同一化した私は「〈攻〉に受け入れられている感覚」を味わった。まさしく「すべての私を受け入れられている」という感覚である。」
（小松原織香「「レイプされたい」という性的ファンタジーについて」）
