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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<愛することを学ぶ2

「人を愛したいと思うことは、どうも愛されたいと思うことらしい。……〔誰でも〕愛されたいと思っていると見せることは、恥ずかしい。自分が恥ずかしい。自分が恥ずかしいということは、自我が傷つくばかりではない。もう一つのもののために恥ずかしいのです。もう一つのものとは、一口にいってしまえば神です。絶対者のくせに、キリストを通して、個々の行為に、変転自在な具体的方法をさししめした、このガンジガラミの、生き方です。底の底で全人類の精神世界をいっきょに包んでしまうもの。
 たとえば、「隣人を愛せよ」という言葉が聖書にあります。この言葉の重みが、隣人との交際に、影のごとくよりそって監視しているという立場にたったものでなければ、「神」がどんなに言葉的であり、それだから、自在であり、見ているものであるか、わからないと思います。一方にまた、この重みの中にもぐりこんでしまえば、甘美な世界がひらけるということが、身をもってわからなければ、この重みの感じもわかりません。
 愛したいと思う時、すでに「神」が介入してくる。しかるに自分は、自分ふうに「神」と関係なしに愛しようとする。「神」を裏切ることになる。こうなると、「神」をふっとばすか、自我をふっとばすかである。人間はこの両極をもっているとすれば、この両極の間で一方になるか、あるいは、その間で揺れなければなりません。」
(小島信夫「思想と表現──ゴーゴリ・ドストエフスキー・カフカ」)
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