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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<孤立した鋭い正気

「ハムレット、読書をしながら登場。
ポローニアス これはハムレット様、ご機嫌はいかがで?
ハムレット どうやら元気だ、おかげでな。
ポローニアス 私がおわかりですかな?
ハムレット よくわかっておる、魚屋だろう。
ポローニアス いや、とんでもございません。
ハムレット そうか、ではせめて魚屋ぐらい正直者であってほしいな。
ポローニアス 正直者?
ハムレット そうだ、いまの世のなか、正直者は一万人に一人いるかどうかだろう。
ポローニアス たしかにそのとおりですな。
ハムレット 太陽が犬の死骸に蛆虫をわかすは、神が腐れ肉に口づけするをめでたもうゆえなるが──おまえには娘があるか?
ポローニアス はい、ございます。
ハムレット あまり日向を歩かせるなよ。知恵がつくのはけっこうだが、虫がつくのは困るだろう。気をつけるのだな。
ポローニアス ハムレット様、なにをお読みで?
ハムレット ことば、ことば、ことば。
ポローニアス いえ、その内容で?
ハムレット ないよう? おれにはあるように思えるが。
ポローニアス つまりその、お読みになっている事柄のことですが?
ハムレット 悪口だよ、悪口。口の悪いやつがこう書いている。老人とは、その髭白く、その顔皺だらけにして、目より松脂色の液体流し、知脳はおびただしく退化し、あわせて膝関節に衰弱を見するものなり。これはたしかに動かしようのない事実だ。だがこう書いてしまってはあまりに失礼ではないかな、おまえだってカニみたいにうしろむきに歩いてみろ、おれと同じ年ごろになれるはずだからな。
ポローニアス ハムレット様、外の空気はおからだに毒、お入りになられては?
ハムレット 自分の墓穴にか。
ポローニアス たしかにそこには外の空気が入りませんな。……殿下、失礼ながらこれでおいとまをいただきとう存じます。
ハムレット ああ、そのおいとま以上に喜んでおまえにやりたいものはない、おれのいのちは別だがな、おれのいのちは、おれのいのちは。
ポローニアス ではご機嫌よろしゅう。
ハムレット こうるさい老いぼれだ。」
(シェイクスピア『ハムレット』)
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