「かの小規模で、つねに危険に曝されているが、そこではきわめて厳格な道徳が行われている共同体の、つねに戦闘状態にある人々にとって、どんなよろこびが最高のよろこびであろうか？ 力に充ち、復讐心に燃え、敵意強く、陰険で、猜疑心の深い、どんな恐ろしいことをも辞せず、欠乏と道徳によって鍛えられた人間たちにとって？ 残酷の愉悦だ。そしてまた、残酷の点で、工夫に富み、飽くを知らないということが、こうした状態の、そのような人間の徳でさえあるのだ。残酷な人間の行為によって、共同体は気晴らしを受け、絶え間のない不安と用心の陰気くささを投げ捨てる。残酷というものは人類のもっとも古い祝祭のよろこびの一つなのだ。したがって、人々は神々に残酷な情景を提供することによって神々をも気晴らしさせ、祝祭気分にさせたと考える。」
（ニーチェ『曙光 第１書』）
