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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<政治ってなんだろ

「そんなふうに考えるのはひどくくたびれたし、じぶんの頭がとても大きくなったような気がした。彼は見かえしをめくって、くりいろの雲のまんなかにある、みどりの、まるい地球を、ぼんやり眺めていた。みどりのほうと、くりいろのほうと、どっちが正しいのだろう? というのは、いつだったかダンテが、パーネルをあらわすブラシの背のところからみどりのビロードを、はさみで切りとり、パーネルは悪人だと説明したことがあったからだ。今も、うちではこのことを議論してるのじゃないかしら? あれが政治ということだ。政治というものにはふたつの側がある。ダンテは片ほうの側で、おとうさんとケイシーさんとはもう片ほうの側で、おかあさんとチャールズおじさんはどっちでもない。新聞には毎日なにかそのことが書いてある。
 政治というのはどういうものなのかよくわからないということ、宇宙がどこでおしまいになるのか知らないということが、彼をなやました。彼は、じぶんはよわよわしい子供だと感じた。いつになったら、詩級や修辞級の生徒たちのようになれるんだろう? 彼らは大きな声で話をし、大きな靴をはき、三角法を勉強する。でもそれはもっとずっとさきの話だ。まず休みがあって、それからつぎの学期があり、また休みがあって、また学期があってまた休みがあって。汽車がトンネルを出たりはいったりするみたいなもの。耳をあけたりしめたりするとき、食堂で聞える生徒たちの声のようなもの。学期、休み。トンネル、出る。がやがや、静か。ずっとさきのこと!」
(ジェイムズ・ジョイス『若い芸術家の肖像』)
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