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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<羨ましいほど苦しんでる

「ねえ、きみ! ぼくはきみに対してこの問題で完全に率直になったことは一度もありませんでした。今ぼくはどうすればいいのでしょう! 生れてこの方一度としてこれほどの絶望を堪え忍んだことはありません……死ぬほどのやるせなさが心をしめつけ、夜は夢にうなされて叫び、咽喉の痙攣に息がつまり、涙が時には執拗に塞きとめられているかと思えば、時には川のようにほとばしるのです。ぼくを裁くのはいいですが、ぼくを責めないで下さい。ぼくは正直な人間です。ぼくは、彼女がぼくを愛していることを知っています。しかし、もしぼくが彼女の幸福を妨げたりしたら、どうしたらいいでしょう? その一方、ぼくはクズネツクの求婚者なぞ、信じてはいません! 病身で苛立ちやすく、心の発達した、教養のある聡明な彼女が、どこのだれともわからぬ男に身を任せるはずがないではありませんか。そんな男は、内心ひそかに、結婚生活では殴ることも正当な行為とみなしているかもしれないのです。彼女は善良で、信じやすいたちです。ぼくは彼女をよく知っています。彼女ならどんなことでも信じこませることができます。その上、(いまいましい)おばさんたちや、状況の望みのなさが、混乱させているのです。決定的な返事、つまり、秘められている細部の事情のいっさいは、四月二日までには突きとめますが、ねえ、きみ、どうしたらよいか助言して下さい。もっとも、何のためにぼくはきみの助言を求めたりするのでしょう? 彼女をあきらめることなぞ、ぼくにはどんなことがあっても、絶対にできません。ぼくの年齢で恋は酔狂ではありません、それは二年もつづいているのです、いいですか、二年もですよ。十か月の別離の間にもそれは弱まらなかったばかりか、常軌を逸したところまで行ってしまったのです。あの天使を失ったら、ぼくは破滅です。気が狂うか、でなければイルトゥイシ河にとびこむでしょう! これはわかりきったことですが、ぼくの問題がうまく行きさえすれば(詔勅のことで)、ぼくはだれよりも先に選ばれるに違いありません。なぜなら、彼女はぼくを愛しているからです。それは確信しています。」
(ドストエフスキー「A・E・ヴランゲリ宛書簡 3」)
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