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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<詩

「その少女は十九だと答へたつけ
 はじめてひとに見せるのだといふ作詩を差出すとき
 さつきからの緊張にすつかりうけ応へはうはの空だつた
 もつと私が若かつたら
 きつとそれを少女の気儘な不機嫌ととつたらう
 或はもすこし年をとつてゐたなら
 かの女の目のなかで懼れと好奇心が争つて
 強ひて冷淡に微笑しようと骨折るのを
 耄碌した老詩人にむける憐れみの目色と邪推したらう

 いま私は畳にうづくまり
 客がおいていつたノート・ブックをあける
 鉛筆書きの沢山の詩
 愛の空想の詩をそこによむ
 やつと目覚めたばかりの愛が
 まだ聢とした目あてを見つける以前に
 はやはげしい喪失の身悶えから神を呼んでゐる
 そして自分で課した絶望で懸命に拒絶し防禦してゐる
 ああ純潔な何か

 出されたまま触れられなつたお茶に
 もう小さい蛾が浮んでゐる
 生涯を詩に捧げたいと
 少女は言つたつけ
 この世での仕事の意味もまだ知らずに」
(伊東静雄『反響』)
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