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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<秘密の数だけ邪悪になれるよ

「ところで最後に、自分のなかに閉じ籠っている人間──彼は閉鎖性のなかで足踏みしている──の内部をもう一度少しばかりのぞいてみることにしよう。この閉鎖性が絶対的に保たれている場合には、あらゆる点において絶対的に完全に保たれている場合には、彼に最も近く迫っている危険は自殺である。自己自身に閉じ籠っている人の内面に何が秘められてありうるかということについて、大抵の人達は無論何の予感ももっていない、──もしも彼等がそれを知ることがあったら、きっと恐愕するであろう。それに反しもしそういう状態にある人が誰かに、たった一人の人にでも、ことをうちあけるとしたら、彼はきっとそのために緊張がぐっと弛むかぐったりと深く気落ちするかしてもはや自殺というような行為を遂行する力がなくなるであろう。絶対の秘密に比較すれば、一人でもそれを一緒に知っていてくれる人のある秘密というものは一音階だけ調子が柔らかくなっている。そこでおそらく彼は自殺をまぬかれることでもあろう。けれどもその場合絶望者は自分がほかの人に秘密をうちあけたというちょうどそのことに絶望することがありうるのである。もしも彼がずっと沈黙を守りつづけていたとしたら、きっとその方が、いま一人のそれを与り知っている人をえたよりも遥かに限りなく良かったのではないか? 自分のなかに閉じ籠っていた人が、自分の秘密を与り知っている人をえたというちょうどそのことのために絶望にもたらされたといういくつかの実例がある。そこでまた結局帰するところ自殺ということになる。詩人はこのような破局を、主人公が自分の秘密を与り知った人を殺させるといったふうに描きだすこともできよう。……このような結末に終る悪魔的な人間の苦悩に充ちた自己矛盾──自分の秘密を知っている人を持たないでいることも持っていることもどちらも耐えられないというような──を描写することはけだし詩人に課せられた一つの仕事であろう。」
(キルケゴール『死に至る病』)
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