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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<普通であることの難しさ2

「それはアチック・ミューゼアムの広間であった。〔渋沢敬三〕先生は大てい夜九時頃に銀行から帰りすぐアチックへ来る。その時間だと所員の誰かがまだアチックでうろうろしていることが多いのだが、その二十日ほどはほとんど私一人が先生の話相手になった。私もそれまでの体験について話したのであったが、先生の話は私に対してはきわめて教訓的であった。
「大事なことは主流にならぬことだ。傍流でよく状況を見ていくことだ。舞台で主役をつとめていると、多くのものを見落としてしまう。その見落とされたものの中に大事なものがある。それを見つけてゆくことだ。人の喜びを自分も本当に喜べるようになることだ。人がすぐれた仕事をしているとケチをつけるものが多いが、そういうことはどんな場合にもつつしまなければならぬ。また人の邪魔をしてはいけない。自分がその場で必要をみとめられないときはだまってしかも人の気にならないようにそこにいることだ」などということばは私の心に強くしみとおった。そしてそれを守ろうと思ったが、なかなか実行できるものではなく、人の意識にのぼるような行動をとることの方が多いのである。」
(宮本常一『民俗学の旅』)
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