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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<媒介の消失

「私は再度あなたと諍いを起こそうとしている。あなたは真実を口にしないし、誠実であろうとしない──ただただそれに尽きるのです。あなたが郵送してくる論はまことしやかな嘘──私はそれを憎みます。たとえそこに幾つかの本当のことが含まれているとしても、それは問題ではない。事実は、その論の中のあなたが終始一貫して虚偽だということなのです。
 あなたの根源にある欲望は最大の戦争願望、あなたは真実、超-戦争-精神。あなたの欲することは、銃剣をもつ兵士のように突き刺し撲つこと──それを言葉で崇高化しているだけのことです。あなたは片端から銃剣で串刺しにしながら、「これは究極の平和のためなんだ」と言う兵士に似ている。そんな兵隊は大嘘つきでしょうし、あなたが、あなたの根源的な自己が、究極の平和を欲するというのも爪の先ほども真実ではない。まやかしの間接的なやり方で、突き刺し撲つ欲望を満足させているだけの話。「嘘つきの豚野郎、俺はお前達みんなが大嫌いだから、こうして襲いかかってやるんだ」と口にしながら、名誉あるやり方で直接その欲望を満足させるか、さもなければ、あなたがその領域では真実でありうる数学にしがみついていることです。平和の天使として現れることは──そんな役回りなら、私にはティルピッツ提督の方が何千倍もましです。
 あなたは、ただ単に、獰猛かつ反社会的になった抑圧された欲望で満ちあふれているにすぎない。平和宣伝という名の羊の衣の下から見え隠れするのはそれです。あなたの主催する会合に出席した女性は私に言ったものです。「あんな邪悪そうな顔をした人が、平和と愛について話すのはとても奇妙に思えました。本気で話していた筈はありませんわ」と。
 あなたには真理を理解する生得の力がある。私はそれを信じますが、あなたの意志に対しては瞬時たりとも信頼を置かない。あなたの意志は贋で残酷。悪魔的な抑圧がいっぱい詰まっているものだから、いやらしく残酷にしかなりえない。むしろ略奪と残虐を専らにするドイツ兵の方が、善について語るあなたよりも私にはましです。私に耐えられぬのはあなたの虚偽。──例えあなたが数等ひどい殺人者でも、「自分はこうなのだ」と自分自身に向かって言うのなら、私は構いはしない。敵意ある欲望に凝り固まった全人類の敵。──あなたは正にそれです。虚偽を憎む気持があなたを鼓舞しているのではない。あなたは血と肉をもった人間を憎悪しているのです。血に飢えた倒錯精神。──それが自分だと、なぜ白状しないのです。再び赤の他人になりましょう。それがいいと思いますから。」
(D.H.ロレンス「バートランド・ラッセル宛書簡」)
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