「作家の値うちは何できまるか。
その問いにはいくつかの答えがあるだろう。
出版社にとっては、「売れる」ということは大事なことに違いない。
文化人・知識人として作家を遇するメディアにとっては、「知名度」が大事だろう。
一般の、さして文学に関心などない読者にとっては、とにかく「面白い」ことが大事であるかもしれない。
けれども、その値うちを、多少とも「長続きのするもの」として考えたらどうだろうか。
つまり、ただ売れるのではなく、売れ続けること。
一時有名なのではなく、長期間にわたって高名であること。
長期間にわたって読者に興味深く受け入れられること。
このような視点に立った時に、作家の値うちを決める指標は、自ずと決まってくるだろう。
要するに、読者の記憶に残る作品を残すことである。」
(福田和也『作家の値うち』)