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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<孤独のデザイン

「彼の映画は毎回ストーリーが決まっている。……すなわち権力に翻弄される人間がいて周囲に抵抗する。それだけ。……
 代表作とされる『ワイルドバンチ』は、はぐれ者の極悪人がより組織的な極悪人に対してムカッ腹を立て、その場にいる人間を皆殺しにする話だった。昔は「笑いながら女子供まで平気で殺した」男が、その後、結婚して丸くなり、友達が殺されたからまた人殺しをするというクリント・イーストウッドの『許されざる者』なんか、偽善的な映画だと思う。『ワイルドバンチ』では、もうこんな生活は疲れたと思いながら女子供を殺しまくる男たちが死んでいくドラマだからだ。この映画の底に流れるエモーショナルな反体制意識は、ぼくをどうしようもなく感動させる。
 そのエモーショナルな部分について、映画の規模が『ワイルドバンチ』と比較するとしょうもないくらい小さくなった分だけ感動的になったのが『ガルシアの首』である。ぼくは『ガルシアの首』が大好きだ。反体制に生きる男ウォーレン・オーツの八つ当たりだけでドラマが構成されているこの映画こそ、ペキンパーの最高傑作とは誰もいわないけど、物凄く悲しくて悲しくて、まるで自分を見ているようで、泣かせられる一本だ。もうこの世の中には何もなくて、八つ当たりするしかない。選択できぬ救いようのない現実をペキンパーはよく知っている。
 …………
 ……本当の良い映画、良書とは、いかに自分が誰にも愛されず、絶望的で孤独な立場にあるかを示すだけで、人生にはわびしさしかないことを教えてくれるものだ。」
(中原昌也『ソドムの映画市』)
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