「真珠湾奇襲は世界史的にも画期的な行為です。何故アメリカはあれほど真珠湾奇襲を批判するのか。戦後の日本人はほとんどそれに扇動されているんです。アメリカが恐れたのは、日本人との戦争で、アメリカの黒人が戦争と連合して黒人解放戦争を起こすことです。そうなるとアメリカの中がグチャグチャになるでしょう。
日本に戦争の大義を握られるわけじゃないですか。アジア解放、被抑圧的民衆の解放ということで。嘘だと信じていても、それを信じた人間はそれで動くわけです。だからアメリカ国内の、黒人と日本を分離するために、日本の戦争を矮小化しようとします。だから必ず真珠湾映画は、うまい具合に、そういう事実がありましたが、黒人が日本の飛行機を撃つシーンがあります。……逆に、今でも、アラブに行けば真珠湾奇襲と特攻隊のシーンは拍手だという話です。
ドイツも、侵略しかしていないといわれますが、違うんです。やっぱりドイツも敵の敵は味方にします。たとえば北アイルランドのアイルランド共和国軍(IRA)、あれはドイツ側です。彼らは反英独立闘争をしているわけです。だからドイツ空軍がイギリスを爆撃してくれるとおおいに助かるわけです。ドイツ機が撃墜されてパイロットが捕虜になりますが、捕虜収容所から脱走したドイツの捕虜はアイルランド共和国軍が制圧している地域に逃れるわけです。するとアイルランド共和国軍がドイツの捕虜をかくまって、偽造パスポートを作るなどしてドイツに帰してやるわけです。
また、北アフリカのマグレブ諸国も親独側です。ロンメルの有名な快進撃の影には親独的な現地の協力も大きく働いています。バルト三国やウクライナは反ソ連闘争をしていますし、ドイツの進撃に連動して反ソのパルチザン闘争さえしています。しかしこういう歴史は、戦後ナチスは侵略的犯罪者だという固定観念に拘束され、彼らは立場上いえなくなった。自分たちはナチスとは関係ありません、さらにはナチスに抵抗したとしかいえなくなった。そういう悪扇動が戦後行われています。
その一番わかりやすい例としてスバス・チャンドラ・ボースがいます。ボースはインド国民会議の闘士で、反英独立運動をしていました。ドイツとイギリスは戦争をしているわけです。だからドイツ側に立ってイギリス側と戦う用意で、北アフリカ戦線で捕虜となったインド兵を集めて自由インド旅団を組織するわけです。ところが日本が真珠湾攻撃をしてビルマに侵攻します。ボースは祖国のインドに近い日本に行こうとします。ボースは日本に行きたいと言い、ヒトラーは快諾し、ボースはUボートに乗って、南アフリカの喜望峰を回ってインド洋に来る。そこで、待機していた日本の潜水艦に合流して、ドイツの潜水艦から日本の潜水艦に移って、日本に来る。そしてボースに感激した東條英機が、インド侵攻のインパール作戦を起こすわけです。インパール作戦は日本では悲惨な戦争の代名詞として言われていますが、あれは本当の意味での義戦なんです。その結果は凄惨な敗北でしたが、ボースの意志に感激して日本がやった義戦であることは正しく評価すべきなんです。
日本の保守には、「日本だけが悪くない。ナチスは悪かった」と考える人が多いのですが、そこからは日本の戦争は見えてこないと思いますよ。」
(千坂恭二「ロングインタビュー・21世紀の革命戦争」)