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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<抽象かつ具象2

「こう考えてくると、「保育の実践者は子どもを具体的に捉えている」が「心理学者は子どもを抽象的に捉えている」という言い方はおかしいということになる。
 保育の実践者が子どもを見てどんなに詳細な動きももらさずに記述したとしても、あるいは、心理学者が子どもを観察してさまざまな専門用語を駆使して連綿と記述したとしても、もしもそれらの記述が「いろいろなことがある」という事実の寄せ集めにすぎず、「他のものごととの関連」が見えてこなかったり、統一的な全体像が描きだされていなかったりするのであれば、その記述は「抽象的」なものである。
 一方、保育者の記述で、「理論的な説明」はうまくできなくとも、「そのことは、これまでにあったいろいろな出来事や事実を関連づけてくれる」とか、「そういうことって、よくある他のいろいろなことにも共通している」とか、「そのことから、Aちゃんという子どもの“Aちゃんらしさ”がよくわかる」というような記述であれば、「具体的」記述といえる。また、心理学者が「三歳児は、一般に、他者が自分とは異なる考えをもつことが理解できない」と述べたとき、そのことが、さまざまな遊び場面での三歳児の行動や、三歳児と大人との会話でこれまで見過ごされてきたある種の「話のズレ」などを統一的に説明し、「三歳児」の全体像を描く一つのヒントになっていると実感できる場合は、これも「具体的な」記述だということになる。」
(佐伯胖『幼児教育へのいざない』)
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