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Lubricate us with mucus. ──2nd season 飛翔編

   Be fierce as fire is fierce.

( ゚Д゚)<廃墟都市

「この二、三日、私達は、波が私達を目がけて打寄せてくる海辺に滞在しています。船着場の彼方、川の向うにも、原初のままの平坦な銀色の世界がある。──青白い砂と、とても白い泡が、銀色の夕刻、空の下から、幾列にもなって降りてくる世界。人はなく、皆目人がなく、家も建物もなく、ただ海浜の丸石の縁に、乾草の山と古い黒い製粉場だけがあって、残りは全て、泡と音と銀色がかった光が走り、鴎が数羽、生れかかった思念のように揺れている、平らな未完の世界。そこにまだ原初の世界があるのだと理解することは、大変なことです。──完璧に清く混り気がなく、無数の白い泡が走り、空と浜辺の間に鴎だけが揺れ、黄色い海罌粟が、黄色い光のように激しく風に顫え、それから種子の先が煌く。
 耐えがたいことは、この清潔な世界の上に、私達が不潔な世界の塊を押しつけてしまったことです。広々とした夕暮から視線を転じ、陸の端に乗った悪性の突起物のようなこの不定形の黒いリトルハプトンを見るとき、私は胸が悪くなって、もう戻ることは出来ないような気がする。清い地面の上の病いに似た、突起物のような小さな不定形の家々には、どうしようもなく病んだ精神が充満し、宿屋の女主人はみな金銭と家具について長々と喋り、客はみな金と家具から束の間逃れた幸せを口にする。万事、健康を破壊し尽す、凄まじい病いに似たもの。海岸で彼らを見ると、何か憐れ気で、あたかも彼らの人生が、所有物というこんな瘡蓋に似た無を積み上げるのを望みはしなかったのに、逃げ出すことができないとでも言いたげに、愁嘆している。私達をみな貪り尽した固い鱗の竜とは、この淫猥の瘡蓋のような家屋、何が何でも常に所有しようと足掻く欲望と倦くなき闘い、所有されぬために所有者にならねばならぬ必要──。余りにもそれは醜怪です。私はもう人と一緒に住めない。余りに猥褻で、吐気を催すのです。所有者と被所有者は、同じおぞましい病いの両面のごときもの。まるでこの世が地獄に変ったかのように、私は一種の狂気に襲われるような気がしますが、それはただ表面に押しつけられた一時的な病い。拭い去ることのできるものなのです。」
(D.H.ロレンス「バートランド・ラッセル宛書簡」)
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