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Lubricate us with mucus. ──2nd season 人間将棋編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<多事争論のリミット

「十九世紀を通じて勃興した力動精神医学はジャネとフロイトに至って完成を見た。二人は共に、神経症の幼児期外傷、とくに性的外傷起源を示した。催眠術を使ってジャネはこの立場を取りつづけたが、催眠術を捨てて自由連想法を開発したフロイトは、幼児期性的外傷についての成人の語りは想像の産物であるという見解に変わった。見解の対立は持続し、内的葛藤か外傷反応かという神経症の病因論の対立は二十一世紀まで持ち越された。
 この対立は、法的真実と心理学的真実とのズレによって複雑なものとなった。幼児記憶あるいは児童陳述の信憑性は法廷では常に問題になる。児童や性被害者はしばしば法廷での反対尋問に耐えられない。ソフィスケートされた法的手続きは人民が闘い取った歴史的背景を持つ。しかし法廷に耐えられるものだけが真実だと心理学的にはいうことができない。他方、心理学的事実は必ずしも客観的真実ではない。記憶は日々私たちのストーリーを紡ぐ能力によって絶えず変化する。覚醒時の語りさえ強調点や詳述部分の移動、ディテイルの比重の置き方などが変わる。それは人生の全体像の変化に応じて、事件の意味と重みと位置づけとが変わることである。」
(中井久夫「トラウマとその治療経験──外傷性障害私見」)
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