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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<反対運動の享楽

「このような意味において、今井監督作品『橋のない川』第二部における伊藤雄之助演じる部落民が「蛇を食べるのが好き」と言うごとき「粗暴な」(享楽的な)キャラクターであることに対して、土方鉄(作家)ら解放同盟が、部落民をそのようなイメージでとらえることが差別的だと見なしたことは、十分に理解できる。確かに、当時の(米騒動の時代の)部落民が置かれていた劣悪な環境からして、そのようなこともあったとして、解放同盟の批判を「いいがかり」だとすることもできようが、しかし、そのような環境にあって「粗暴」たらざるをえなかったのは、別に部落民に限らなかったはずである。その表現は、やはり「差別的」であり、存在しないはずの部落民を「もの」として存在せしめる機制ではある。
 しかし、そのような表現を差別だとして糾弾する闘いが、同様に享楽的なものたらざるをえないことも、また必然である。実際、『橋のない川』上映阻止闘争は、きわめて激越に(享楽的に)展開され、だからこそ、その闘争は映画を上映中止に追い込み、作品をほとんど「存在しない」ものと化してしまったのである。「もの」として存在してしまっているものを「存在しない」として否定すること自体が、「もの」を享楽することにほかならないからだ。このディレンマゆえに、解放同盟には不断に享楽の「匂い」がつきまとうほかないのである。」
(スガ秀実『革命的な、あまりに革命的な──「1968年の革命」史論』)
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