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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<妥協はS.H.I.T.

「オセロは嫉妬ぶかくない、いや、かえって人を信じ易い、とはプウシキンの言葉である。そしてこの言葉一つだけでも、わが大詩人の異常な洞察の深さが、証明されていると言っていい。オセロは、単に心を滅茶滅茶に掻き乱され、全人生観を濁されたというに過ぎない。何故なら、彼の理想が亡びたからである。オセロは、身を潜めて探偵したり、隙見をしたりなぞ決してしない。彼は人を信じ易い。それ故、彼に妻の不貞を悟らせるためには、非常な努力を費やして、つっ突いたり、後押ししたり、油をかけたりしなければならぬ。本当の嫉妬漢は、そんなものではない。本当の嫉妬漢が、少しも良心の苛責を感ぜず、どれくらい精神的堕落と汚辱のうちに安住出来るかという事は、想像以上なのである。……オセロは、どんな事があろうとも、決して妥協出来なかったに相違ない。たとえ彼の心が幼児のように穏やかで無邪気であろうとも、赦す赦さぬは別として、妥協する事は出来なかっただろう。ところが、本当の嫉妬漢はまるで違う。ある種の嫉妬漢が、どれくらい妥協し赦し得るか、想像するのも困難である。嫉妬漢は誰より一番早く赦すものだ。女は皆それをのみ込んでいる。」
(ドストエフスキー『カラマゾフの兄弟』)
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