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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<愛する人よ、

「書くときは、いくら孤独でも十分ということはなく、書く人のまわりが静かすぎるということはなく、夜はまだあまりに夜でなさすぎるのです。だから意のままになる時間が十分ということもない、道は長く、人はたやすく逸脱し、それどころか時折不安になり、もう強制や誘惑がなくても走って帰りたい欲求にかられます。……ぼくはしばしば考えたのですが、ぼくにとって最良の生活方法は、ランプと、書くために必要なものとをもって、広々とした、隔離された地下室の奥で居住することなのでしょう。食事が運ばれるのですが、その食事はぼくのいる場所からいつもはるか遠く、地下室のもっとも外部に近いドアの向う側に置かれます。部屋着のまま、丸天井の下をずっと通り抜けて食事を探しに行くのが、ぼくの唯一の散歩というわけです。それから自分のテーブルにもどり、ゆっくりと慎重に食べると、すぐさま仕事を再開するでしょう。そんなとき何か書けないことがあるでしょうか! なんという深みからそれを引き出すことができるでしょう! 苦労もなしに! というのも、極度の集中は苦労というものを知らないから。ただぼくは恐らくそれを長くは続けられず、また最初の、恐らくこのような条件でさえ避けがたい失敗の際に、すごい狂気の発作に逃げこまざるをえないでしょうね。こんなことを君はどう思いますか? 愛する人よ、この地下室の住人を敬遠しないでください!」
(フランツ・カフカ「フェリーツェ宛書簡(一九一三年一月十五日)」)
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