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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<カフカと安部公房の違い

大江 「闖入者─手記とエピローグ─」〔安部公房の短篇〕。僕は、これを若い頃に読んで、本の装丁も憶えているくらい、とても感心して、それからずっと安部公房のファンです。実にうまい着想で、それが単なる寓話にならないように、かなり具体性もおびさせて、戦後的な気配を漂わせながら進行していく。しかし最後には、その進行でうまくいかなくなる。エピローグまでくると、結局、安部さんがこの時代によく書いた作品の幾つかの寓話的なものと近づいてしまう。……
古井 僕は、主人公の危機の中へ、こういう引っ張り込まれ方をするのはあまり好きじゃないんです。神経がいらいらする。ところがカフカは辿れるんです。安部さんには、読者を立ち止まらせないところがあります。次から次に、ある方向へ引っ張っていく。
大江 嘘くさいんでしょうか。カフカはまったく嘘くさくない。
古井 どんどん按配が過剰になっていく流れですよね。この主人公の危機が量的にひどくなっていく一方で、質的に深まっていかないからじゃないかしら。」
(古井由吉×大江健三郎「百年の短篇小説を読む」)
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