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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<愛する人よ、2

「……ぼくの言葉を信じてください、フェリーツェ、あなたの仮定は正しくありません。書くことに対するぼくの態度、人間に対するぼくの態度は不変であり、一時的な状況でなく、ぼくの本質に基づいています。ぼくは自分が書くことのために孤独を必要としますが、「隠者のように」ではなく、それでは不十分で、死者のように必要なのです。この意味での書くことはより深い眠り、つまり死であり、死者を墓のなかから引き出さないだろうし、引き出すことができないように、ぼくも夜の書きもの机から引き離すことはできません。このことは人間との関係と直接なんの関連もなく、ぼくはただこうした規則正しい、持続的な、厳しいやり方でのみ書くことができ、従ってそうしてのみ生きることができるのです。しかしそれは、あなたが書いているように、あなたにとっては「相当困難なことになる」でしょう。人間に対する恐れはぼくには以前からありました。そもそも人間自体に対してではありませんが、ぼくの弱い性質の中に彼らが侵入してくることに対して。最も親しい人々でもぼくの部屋に立ち入られるのはぼくにとって恐怖でしたし、この怖れの単なる象徴以上のものでした。しかし、度外視できぬことながらそれを度外視するとしても、母であれ父であれ、人々が一体既に書いた秋や冬の生活をしているぼくらのところに、ぼくを、そしてぼくと感情を共にするならぼくの妻を我慢ならぬほど邪魔することなしに、どうして入って来られるでしょうか? 「しかしそんな風に引き籠って生活することが、あなたにできるかどうか、あなたには分からないのです」。「わたしがあなたに対してすべての人間の代わりとなるかどうか、あなたには分からないのです」。これは答えでしょうか、問いでしょうか?」
(フランツ・カフカ「フェリーツェ宛書簡(一九一三年六月二十六日)」)
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