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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<現実=夢

「トランプはアメリカを再び大国にしたがっている。これに対してオバマは、アメリカはすでに大国であると反応した。だが、本当にそうか。トランプのようなひとが大統領を務める国を、本当に大国とみなしてよいのか。トランプが大統領であることの危険性は明らかである。彼は、連邦最高裁判所には保守系の判事を任命すると約束しただけではない。彼は邪悪な白人優越主義者サークルを活発化させただけではない、また反移民をかかげる人種主義者といちゃつくだけではない。彼は基本的な礼儀作法を軽んじる、そして基本的な道徳規範の崩壊を身をもって示すだけではない。彼は民衆の窮状に心を砕く一方で、富裕層の減税、さらなる規制緩和、等々を含む、容赦のない新自由主義的な計画を実際に推進する。トランプは低俗な日和見主義者であり、また人間というものの低俗な見本でもある。彼は間違っても、生産的で革新的な、成功をおさめた資本家ではない。破産し、そのつけを納税者に払ってもらうことにかけては、彼の右に出る者はいない。トランプをめぐるこんなうわさ話がある。数年前、彼は娘のイヴァンかといっしょに、高級レストランの駐車場に向かっていた。二人はある街角でひとりのホームレスが寝ているのを見た。するとイヴァンカは軽蔑的なしぐさをした。だがトランプは彼女をさえぎるようにこう言った。「この男に敬意を示しなさい! 彼はわたしより価値がある。その差は二十億ドルだ」。もちろん彼が言いたいのは、自分は借金だらけでその価値はマイナス二十億ドルだ、ということである(とはいえ、トランプという存在は資本主義そのものであるという主張も可能だろう。資本主義の核心は、この人物を通じて表面化しているからである)。かつらをかぶっているひとは、普通、それを本物の髪のようにみせようとする。トランプは逆であった。彼は自分の本物の髪をかつらのようにみせた。この逆転はトランプ現象を的確に定式化しているかもしれない。もっとも基本的なレベルで言えば、彼は自分のいかれたイデオロギー的虚構を現実として売ろうとしているのではない。彼が実際にやろうとしているのは、みずからの低俗な現実を美しい夢として売ることなのである。
 …………
 したがって、トランプを風刺する言葉ばかり聞かされると、ヴァーグナーの『ラインの黄金』に出てくるローゲの言葉を使ってそれに応答するトランプの姿が思い浮かばないだろうか。「愚か者たちは、自分の恥を隠すために、わたしをののしるのか?」。だが、トランプを風刺することには、それよりも厄介な問題がある。数年前にコメディアンが舞台上で、トランプの発言やツイートや決断と同じものをねたにしたとしよう。それは現実味のない、誇張されたジョークとして受け取られただろう。ここからもわかるとおり、トランプ自体がすでにトランプのパロディなのである。これは不気味な効果をもっている。彼の実際の行動のほうが、そのパロディよりも、破天荒に面白いのである。」
(スラヴォイ・ジジェク『絶望する勇気』)
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