「……大抵の人間が世界を自分に帰属させるためにリスクという言葉を使っているように思う。
世界を自分に帰属させるというのは、同類を増やすために価値を振りかざすといった意味だ。先が見えないから自分の考えだけそこに投げ入れて一つ結果を見てやろうとする。出なかった芽は存在しなかったのと同じだ。明日が巡ってくるように昨日が過ぎた。過去は今を支えるためにだけあり、未来は今の純粋な拡大としてある。彼らの思考を粗描してみるなら、こんなところだろう。
自我の肥大が「仕事ができること」の証だということだろう。だから仕事ができない人間は彼らにとってはこちらに引きずりこむ相手でしかない。あるいは弱者として「過去」に閉じ込めるための存在でしかない。
当然ながらこれは相互理解ではない。しかし長い間こんな欺瞞的な身振りが世界を成り立たせているのだと思われてきた。
「過去」は復讐するのだろうか。
…………
……過去「が」赦すのでないか。」
(encore@conceptionfork「リスクとは何か」)