「子供の頃から意味ありげな呪文として聴かされてきた「社会」の二文字。社会に出たら、とか、社会がそうはさせない、とか、そんなんじゃ社会では、とか、まるで自分の知らない怪物に時が満ちたら対峙しなくてはいけないかのように言い聞かされてきた。……
どうやら刷り込まれてきた社会というやつは実際の社会とはまるで違うものらしかった。私の中にどっしりと居座るこの暗いものは、良心とは名ばかりの無責任な態度の集積からなる、情念の墓場だった。どんな朗らかな気持ちもいずれ萎え凋むものだとその姿は告げ、私の耳元で「楽しめるのはせいぜい今のうち」と囁き続けた。
人は何かしらの価値を提供することで社会生活を送っている。そこには大抵無自覚に返礼を期待する心理が入り込む。私はやさしさというものは生存戦略としてはもっとも効率が悪いものだと考えている。その不効率性のゆえに世の原理たりうる何ものかなのだろうと思っている。そんなやさしさは社会とはもっとも相容れない性質のものだろうと考えてきた。……」
(encore@conceptionfork「最近考えたこと」)