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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<超自我の勝手にしやがれ2

「男は女に、“楽園状態”を求めてるということははっきりしちゃった。そんで、女の方としては「そんなに一方的に“楽園状態”押しつけられる方の身にもなってごらんなさいよッ!」と言わざるをえないような状態になってしまった、と。これが“現在”。だもんだから私は本書の約しょっぱなに奇ッ怪な一文を掲げたのね──“好きだというかわりに ちんちんたててね”という一文を。
 …………
 さて、それではどうして“ちんちん”が立たないのであろうか? こりゃもう簡単な話で、“〔男子の女性への付着は〕性欲ではない。この強烈さはむしろ、私が今しがた述べた楽園的状態への要求に基づいている”〔エーリッヒ・フロム『フロイトを超えて』〕からなのね。
 でもサ、そんなこと、女の子は嘘だってこと知ってんのよね。「だって“ヘッペ”って気持ちいいんですもん」ていう前提があるからね。“ヘッペ”というのは、北海道弁という日本語の地域差によって生じた“標準語”を成人語とした場合の“幼児語”における、“性交”のことですな。
 好きだ→仲良くなりたい→もっと仲良くなりたい→仲良くなった、アア気持ちいい→もっと気持ちよくなろう──というプロセスにのっとって、人間というのはセックスするんでしょ? と、女の子は言っておる訳でありますな。「どうしてあんた、“気持ちいいのはいいことだね”ってことばっかり言って、気持ちのいいことはしようとしないのよ?」と言っておる訳ですな。
 言うだけでなんにもしないのは、これは嘘をついてるということなのね。意外とこういう簡単常識ってのが通用してないみたいだからこの際はっきり言っとくね。
 “言うだけは言うけど、なんにもしない”というのは、そういうことなんだけど、でもそういう風にはあんまり思われてない。これホントよ。
 …………
 ちょっとばかり勉強した人って、ここら辺すぐ間違うのよね。“言うだけ言って”の部分だけを問題にするのよね。「ともかく、僕はそう言ったんだし、言ったことは間違ってないし、そのことに関しては嘘をついたつもりはないし」って。“発言”は発言だけで終わっちゃうと思ってんのよね。言うだけで、その言ったことがどういうことをさしてるのか分んない“学者”なんかについてお勉強なんかしてるから、なんにも分んなくなっちゃうのよね。言うだけで、それと行動とは全く別問題だと──口先ではともかく、心の中じゃしっかりと──思いこんでる人についてお勉強なんかしちゃうから、そうなっちゃうのよね。
 どうなっちゃうか?──あなた嘘つきなのよ。
 …………
 私ァここで、“ちんちん立つ”ことが性欲のバロメーターであるかどうかって問題にしてんじゃないのね。“ちんちん立つ”ことは好きということの意思表示、という話をしてんだわァ。
 大体セックスという行為はなんの為に存在してんのか? あなたの性欲を発散させる為に存在してんではないのね。アレは勿論、人間同士が仲良くなる為に存在してんのね。
 …………
 男と女が“恋愛”という形で仲良くなれるのは、アレはお互いに、「いざとなったらセックスすればすぐ仲良くなれるな」ってことに乗っかってるからなのね。そんで、男と女が簡単に「嘘つきッ!」て罵り罵られる関係になるのは、その仲良くなる行為である所のセックスをすると、“男の嘘”が簡単に露呈しちゃうからなのね。」
(橋本治『蓮と刀』)
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