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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<アドルノ、結婚を語る

「結婚は人権の一つであるが、その基盤を奪われた現代ではむざんなパロディーのかたちで生き残り、多くは自己保存のために人目を欺く仕掛けと化している。そのからくりというのは、当事者同士が自分の行うさまざまな悪事の責任を互いに相手方になすりつけてたくみに世間体をとりつくろうことだが、実際の有り様は陰気くさくじめじめした共同生活をふたりして営んでいるのである。経済的必要に基づく利益協同から当事者の融合が生まれるが、そうした融合を行わずにふたりがそれぞれ独立した生活を営み、自由な立場から互いに相手に対する責任を引き受けてこそ、まっとうな結婚生活と言ってよいであろう。利益協同体としての結婚は否応なしに当事者たちを卑しめるものであり、この世のしくみが悪意にみちているために、たとえ本人がそれを自覚していてもその卑しめを免れることはできないのである。そんなことから時折わたしたちは、利益を追い求める必要のない人たち、つまり金持だけに、その名に恥じない結婚の可能性が与えられているように思ったりする。しかしその可能性は完全に外面だけのものである。なぜならそうした特権階級こそ、利益の追求が第二の天性と化した人種に外ならないからだ──もしそうでなければ彼らはその特権を維持できないはずである。」
(アドルノ『ミニマ・モラリア 第一部』)
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