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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<諍臣

「だれの目にも明らかなことだが、人の気にいられようとする技術は不快なしろものである。命令をうけて微笑んでみせたと思っても、他人の目から見れば我慢のならないしかめっ面にほかならない。そんな微笑みなんぞ、他人は心のなかでは軽蔑している。いや、そんな微笑をつくる派手人間を軽蔑している。そして、そんな微笑を作れと要求する人間を憎んでいる。相手に気にいられることを勘定にいれず、ただ相手に幸福を与えるがゆえに自然に気にいられることこそ、恋の喜びのすべてではなかろうか。……
 ……真実の恋に、つまり、お互いがなんの偽りもない心を通いあわせている恋に陥っている男女の争いというものは、……いわば羞恥のなせる業であって、お互いが相手に対して無関心だと言いっこすることから起こる争いである。そこにあらわれているものは、お互いはお互いに無理強いはしたくないという考えである。相手に対する権利はいっさいもたない、相手の自由はいっさい犯したくない、というわけである。……相手がこちらに服従しようなどという気を起こすと、さもいとわしげにはねつける。相手に気にいられようとする負い目など抱かないで愛されたいためにこそ、かえって相手に気にいらないことばかりしでかそうとする。だが、こういう自由なダンスみたいなものをすることによって、恋は新たに燃えさかる。そこでは、仲たがいなどは表面だけのものである。ところが、アルセスト〔モリエール『人間ぎらい』の登場人物〕たちのような恋にあっては、仲直りこそが表面だけのものなのである。」
(アラン「コケットリー」)
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