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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<ダイアローグ……ろーぎゅ?

ドゥルーズ ……私がどんなふうにゴダールを思い描いているか、簡単に説明してみましょう。ゴダールは根をつめて仕事をする男です。だからどうしても絶対の孤独に沈むしかない。しかし、それはありきたりの孤独ではなくて、途方もなく密度が高い孤独なのです。夢が詰まっているのではありません。幻想とも、計画ともちがう。そうではなくて行為とか事物が満ちあふれ、人間すら詰めこまれた孤独。ようするに多様でクリエイティヴな孤独ということですね。こうした孤独の奥底にいるからこそ、ゴダールはたったひとりでも強い力をもつことができるのだし、大勢でチームを組んで共同作業をおこなうこともできるのです。ゴダールは誰とでも対等につきあうことができる。相手が公的機関であろうと、さまざまな組織であろうと、家政婦や労働者、あるいは狂人であろうと、まったく同じ態度で接することができる。例のテレビ番組でも、ゴダールは常に相手と対等の立場に立って質問しているのです。ゴダールの質問はテレビを見ている私たちを動揺させますが、質問を受けた当人を当惑させることはありません。ゴダールが妄想症の患者と話すときの態度は精神科医の態度ではないし、他の狂人とか、狂人のふりをした人間の態度でもない。労働者と語りあうとき、ゴダールの態度は雇用者のものでも、他の労働者のものでもなければ、また知識人の態度でも、俳優を指導する演出家の態度でもない。しかし、これはゴダールがあらゆる語り口に同調する策士だということではありません。ゴダールの孤独が並外れた容量をもたらし、密度を高めるということなのです。ある意味では、これは常にどもる必要があるというのと同じことです。それも、実際にしゃべるときにどもるのではなく、言語そのものを集約するどもりになるということ。一般には、異邦人になろうと思うなら外国語のなかに飛び込んでいくしかありません。ところがゴダールは自国語のなかで異邦人になろうとしている。……
 …………
 ……話すということは、たとえそれが自己を語る場合であっても、常に他人の位置を奪うことを意味している。つまり他人になりかわって話そうとつとめ、他人には話す権利を認めないということですね。セギー(労働総同盟の書記長)は命令と指令の言葉を伝達するために口を開けている。しかし、わが子に先立たれた母親も、やはり口を開けている。……ならば、命令したり、他の人や他の物にとってかわることなく話すにはどうしたらいいのか? 話す権利をもたない人たちにしゃべってもらい、音声には権力に抵抗する能力をとりもどしてやるにはどうしたらいいのか? 自国語のなかで異邦人となり、言語のために一種の逃走線を引いてやるというのは、たぶん、そういうことを指しているのだと思います。」
(ジル・ドゥルーズ「『6×2』をめぐる三つの問題(ゴダール)』)
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