「(もし……オレ達が“経験から学ばなかった”のではなく
“経験”のために成長出来ない部分を持つようになってしまったのだとしたら?
あれは亀裂ではなく墓穴だったのだとしたら?
…………
必死の墓穴堀り 強引な埋葬
多分……オレは生きていたかったので……
次第に増え続けていた“消えていなくなってしまいたい”想いが……
あの頃は危険水位に達していたので……
それでもまだ心のどこかで生き延びようとしていた……
だからオレは もうそこへ近付けず迂回し いつも……いつも……
だからオレの心の中のあの近辺で起こる事には反応できず……成長もできず
…………
心の中の死んだ土地……
溺れかかっていたオレ自身の何かさえも副葬品のように生き埋めにしてしまった土地……
だから “亀裂”の事を考えた時にあんなにも泣きたくなったのかも知れない
それならば
あの頃のオレの“何か”がいつの日か亡霊のように現れたとしても何の不思議もないし
“その時”には言うしかないだろう?)
「ようこそ!」」
(三原順『Sons』)