「ダドリー「父さん……
それならせめてこの金を手元に置いといて貰えないかい?
万一何かで必要になった時のために……」
父「それはできんよ
なあ ダドリー 大抵の人間は
何かしら自分を幸せにしておけるような口実を持ってるもんだ
仕事で成功できない者は
けれど自分は家庭を大切にしているんだと言うかもしれないし
思い通りに家族を動かせなくなった者は
けれど自分は会社でもっと多くの人間を動かし
そいつらの生活を支えているだと言うかも知れん
何もできない者達でも
自分達はTVに映っている政治家達のように
他人を見下したような目つきや態度などとった事はない……とかな
そして わしの言い分はな
自分のやってきた事の始末は自分でしてきたって事だ
そしてな ダドリー
若い頃なら途中で全く別な口実に切り替える事も難しくはないだろうが
年をとると自分にその口実を言い聞かせて 思い込ませるまでに
ひどく時間を食うようになってな……臆病にもなるし億劫にもなる
だからダドリー
今はもうおまえがわしに譲ってくれるべき時だ
大丈夫 おまえ大好きなおまえの母さんを苦しい目に遭わせたりはせんから
おまえだって大丈夫……やってゆけるだろう?
ここを帰る家としなくても」」
(三原順「XDay」)