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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<青春の要件2

「ドラになにか熱烈な感情がもどってきて、ジルの手をにぎりしめた。しかし、どんなものであれ外部から与えられる権威に、ドラがどんなに影響を受けやすいか、ジルは感づいていた。この戦いにおける彼の大きな弱点は、依然として自分に社会的威信がないことだとは察していたものの、その点に関してはジルもさる者だった。むりやり彼女を強奪しようなどとはつゆほども思わなかった。つまり、愛なんぞに信をおかず、うわべによってうわべを買いとる大部分の男たちが、怠慢にも利用して恥じない押し込み強盗的な手段に訴えようなどという気は、さらさらなかった。《おれの金、もしくはおれの才能を信じろ。そうすればおれはおまえの愛情を信じてやろう》などという手合いにジルは縁がなかった。ジルは、ドラが彼の値打ちを認めて、自発的に折れてくるのを望んでいた。彼のうちには、青春のかたくなな自信がまだ残っていたのである。
「そろそろ行かなかくっちゃ」と、彼がいった。
 ジルは優しくドラを見つめた。それがあまりにもゆるぎない優しさだったので、
「好きなのよ、あなたが」と彼女は叫んだ。」
(ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル『ジル』)
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