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Lubricate us with mucus. ──2nd season 人間将棋編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<ぼくはだれだ2

「ぼくは闘っている。だれもそれを知らない。おぼろげに察した者は若干いるようであり、こういうことは避けられるものではないが、だれ一人として、本当には知らないのである。ぼくは闘っている、つまり、自分に課せられた日々の義務をきちんと果している。ときに疎漏もあるが、そう多くはない。もちろん、これくらいの闘いは、だれでもやっている。しかし、ぼくは、他の人びと以上に闘っているのだ。たいていの人の闘いは、眠りながらの闘いである。夢のなかで手をうごかし、妖怪を追いはらうようなものだろう。これにたいして、ぼくは前面に出て、慎重かつ細心に全力を振りしぼって、闘っているのだ。なぜぼくは、群衆のなかから、いつもは騒々しいくせに、この点では不安になるほどおとなしい群衆のなかから、前面にせせり出てしまったのだろう。なぜぼくは、みんなの注意を自分に引きつけてしまったのだろう。なぜぼくは、いまでは、敵の第一リストに載っているのだろう。ぼく自身にも判らない。ただ、これ以外の生きかたは、生きるに値しないと思われるまでだ。戦争史は、こういう人間を兵士気質と呼んでいる。だが、それとは違う。だいいち、ぼくは勝利を期待していない。また闘いに心踊るといっても、闘争としてではなく、なすべき唯一の事としてである。もちろん、そういうものとしての闘いは、ぼくに限りない歓喜を与えてくれる。これとくらべると、現実に享受でき、あるいはひとに贈ることができる喜びなど、ものの数ではない。たぶん、ぼくは、闘いそのものよりもこの喜びによって破滅することだろう。」
(カフカ「断片──ノートおよびルース・リーフから」)
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