「禁欲主義者の多くは、最も貪欲な人たちである。かれらは、人生のあらゆる局面でハンガー・ストライキをおこないながら、それによって同時に次のことに達しようと望んでいる──
一、一つの声にこう言わせる──もう充分だ、おまえは充分に断食した。もうおまえは他の者と同じように食べてもよい。それは食事とはみなされないであろう、と。
二、同じ声に、同時にこう言わせる──おまえはずいぶん長い間、苦行として断食してきた。これからはおまえは、喜びをもって断食するがいい。それは食事よりも甘美なものとなるであろう(だが同時に、おまえは実際にも食事をするがよい)、と。
三、同じ声に、同時にこう言わせる──おまえはついに世界に打ち勝った。私はおまえを、世界から、食事から、断食から解脱させてやることにしよう(だが同時に、おまえは断食も食事も随意にするがよい)、と。
そこへさらにもう一つ、以前からかれらに絶え間なく語りかけていた声がくわわる──おまえの断食はなるほど完璧ではなかったかもしれない。だが、おまえには善き意志がある。それだけで充分だ、と。」
(カフカ『夢・アフォリズム・詩』)