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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<反音楽

「『審判』の最後でヨーゼフ・Kの視線は、「石切場に接した建物の最上階に」落ちる。「そこに明かりが一つパッとつくと、窓の鎧戸が一つ左右に開き、そこが遠い高みであるためか痩せて弱々しく見える一人の人物が、グッと前のめりになったかと思うと、両腕を思い切って広げた。あれはだれだ? 友人か、いい人間か?」このような転調によって絵としてのカフカの世界が導きだされる。その世界は、音楽に似ているといったような意味でのあらゆる音楽的なものの排除に基づいており、また、神話をアンチテーゼ的に拒否することの放棄の上に基づいているのだ。ブロートによれば、言葉の通常の意味でカフカは非音楽的であった。神話にたいしてあげる彼の沈黙の鬨の声は、神話に対抗することではない。そうしてこの禁欲が、『城』において受話器から聞こえてくるあの歌声や、「ある犬の研究」に出てくる音楽学、そして完成した最後の物語のひとつである「ヨゼフィーネ」などにおいて見られるように、音楽との最も深い係わりを彼に恵むことになっている。彼の冷ややかな散文はすべての音楽的効果をはねつける。十九世紀の墓地に立っている生命の柱のように、彼の散文は、みずからの意味を断ち、そこに走っている亀裂が、ようやくその暗号となるのだ。」
(アドルノ「カフカおぼえ書き」)
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