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Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編

   汝自己のために何の偶像をも彫むべからず

( ゚Д゚)<鑑賞の勘

町田 今日見た寄席の芸で、最初落語を2題聞いて、その後また落語を2題聞きましたよね。もう誰が見てもわかるように、明らかに後のふたりっていうのは、もう全然ちがうわけですよね。なんていうか、個人が立ちあがってこない中に、しかしながら個人が見えてくるっていう。匿名的でありながらも、その人しかできないというようなことが柳昇、文治にはありましたよね。……落語の場合はやっぱりそれはもうあきらかにピタッてこう、こっちに対して有無を言わさない、どんな安い着物を着ててもいい、どんなくたびれた着物を着ててもいいっていうのがあって、やっぱりそれを称して或る種の魔術と呼ぶのじゃないかなと。僕らはやっぱり、そこの魔術に惚れて、こういう業種業態に……業種業態ということはないですよ、僕はやっていることは、まあ、遊び人ですから。ないんですけど、こういう生業をやってしまっているという意味でいうと、そういう魔術をどうしても、受け入れざるを得ないというようなところがあって。……
福田 ……だからよくある言い方だけど、やっぱり文章でもマジックタッチというのは絶対あって。メロディーが伝わってくるような文章とか。でも、やっぱりおもしろいのは、そんなのあるかないかって、わかんないじゃないですか。どうしたって、文章直したって出ないやつはもう一生出ないし、出ないと思った子が出るし、途中から出てきたりとかね。あったのがなくなったりするでしょう。それしかおもしろくないんですよね、本質的にはね。教えようもないし、語りようもないんだけど。
町田 天才を許すか許さないかですよね。要するに天才的な人っていないんじゃないかなとは思いますよね、字を書くという意味では。……
福田 文芸はある意味では音楽よりも模倣性が高いですからね。模倣性が高いし、集約性が高いから、人は全部書かれたことしか書けないわけだから。でも、それをやってみると逆にそのマジックタッチみたいなのが、身も蓋もなく出ちゃうところがあるんですよね、同じことやってんのに。」
(福田和也×町田康「パンク気質芸談義」)
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