Lubricate us with mucus. ──2nd season 盈則必虧編
汝自己のために何の偶像をも彫むべからず
「その意見には賛成しかねます」とKは頭を振って言った。「なぜなら、もしその意見に賛成すれば、門番の言ったことをすべて真実と考えなくてはなりません。ところが、そんなことはありえないということを、あなた自身がくわしく説明してくれたじゃないですか」。「いいや」と僧は言った。「すべてを真実だなどと考えてはいけない。必然だと考えなければいけないのだ」「気の滅入るような結論ですね」とKは言った。「虚偽が普遍原理にされているんだから」このように、「抑圧」されているのは、法の曖昧な起源などではなく、法は真理としてではなく必然的なものとして受け入れられなければならないという事実、法の権威には真理は含まれていないという事実なのである。法の中には真理がある、と人びとに信じ込ませる必然的な構造的幻想は、転移のメカニズムをそっくりあらわしている。転移とは、法という愚かで外傷的で辻褄の合わない事実の背後には「真理」「意味」があるという仮定である。言い換えれば、「転移」とは信仰の悪循環のことである。どうして信じなければならないかという理由は、すでに信じている者にたいしてしか説得力をもたない。」